序章 散りゆくものたち

12/13
前へ
/100ページ
次へ
「次からはそうしよう」  奥から一人の男が出てきた。闇の象徴の様な漆黒のコート血を吸ったような深紅のベレー帽 。  ほかの奴らとは違う重い空気を纏っている。 「お前はガスマスクをしないのか?」  武装した奴は俺を恐れるように後ろに構えている。  だが、こいつだけは堂々と臆することなく俺を睨んでいる。 「…………」 「何も言うつもりはない……か」  ベレー帽が手を前に出した。 「捕らえろ!」  チッ  逃げるしかなさそうだ。  もともと消える命── 〈こんな子供……〉  ベレー帽の横から声がした。 見るとベレー帽の横、一番いかつい男が引き金を引いた。  銃口が火を吹く。銃弾は真っ直ぐ的確に俺に向かってくる。     とっさに左に飛び退き上手く銃弾をかわした。  少し遅れた。一ヶ月も身体を動かしていなかったんだから当然か。  銃弾は右腕をかすめた。  血が流れ、また床に血の池を作り出した。
/100ページ

最初のコメントを投稿しよう!

19人が本棚に入れています
本棚に追加