第1章 緋色の知らせ

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 蝶は細い路地へと入っていった。  もちろん男の子もそれを追いかける。 「キレイ!」  昼でも薄暗い路地、そこに蝶の鱗粉がわずかな太陽光に照らされ、幻想的な光景を作り出す。 「こんなとこにいたのか?」  振り向くと誰かが立っていた。 白いTシャツに迷彩のジャケット。  キャップから少し見える髪は男の子と同じで少し赤みがかっている。 「ねぇ。あれ、お父さんかな~?」  男の子は蝶を指さす。 「モルファ蝶……」  中南米原産の大型の蝶だ。  日本で見れることはまずない。  数年前、ある一人の科学者が遺伝子操作で作り出して以来、夏に見ることができていたが、地球温暖化の影響で春にも見ることができるようになった。
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