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暗闇にまた声が響きわたった。
今度はさっきよりはっきりと聞き取れる。野太くしわがれた声と甲高い声が言い争っている。
「院長、1121号室の患者。どうにかしてくだだい! もう3週間も意識か戻らないんですよ。それに、身元も分からないですし! きっと最下区から来たんじゃないですか」
「何を言ってるんだ! もしそうだとして、このことが他の誰かにバレたら、ワシはクビなんだぞ! 安易に口に出すんじゃない!」
院長の怒声が余韻を残して室内に反響する。
「大丈夫ですよ。この部屋は会議用で絶対防音なんですから。そんな心配しないで、早く、処分をどうするか決めて下さい!」
院長の怒声に対し甲高い声はより一層甲高く声を張り上げて応戦した。
「お前に案があるのか? 処分する案が?」
院長の声には女に対する皮肉が混じっている。
「自然死させましょう」
「そんな事出来るわけがないだろう? バレたら「できます!」
女の声が院長の言葉を遮る。余程自信があるらしい。絶対の確信が。
…………
声が聞こえなくなった。
闇がまた心を支配し出す。
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