序章 散りゆくものたち

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 廊下に響き渡る足音で闇から現実に戻って来れた。  誰かが早足で近づいてくる。革靴とハイヒール。二人いる。  音がどんどん近くにつれ心音が大きくなっていく。  音は一歩また一歩と確実に近づいてきて一番大きくなったところ。部屋の前でで止まった。  心臓が張り裂けそうになる。身体中に心臓の鼓動が響く。  いよいよ、入ってくる。  ズゥーンという重たい音と共に軽い振動が感じられる。 「院長、この箇所です」  右腕に痛みが走る。  包帯をとっているらしい。  ………………………………  しばらくの間沈黙が続いた。今更診察? でもしてるのだろうか? 「やはりこれは噂の?」 「ああ、間違いない」  ………………………………  また沈黙がこの場を支配する。 「だから……だから言ったんですよ。最下区に置いてこようと」    女が震える声で院長に訴えかけた。 「今更手遅れだ。もうワシのクビは避けられない。今夜……処分しよう」  また重たい音と軽い振動が生じ、二人は部屋をでていった。  フッ、  願ってもない話だ。
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