序章 散りゆくものたち

8/13
前へ
/100ページ
次へ
 その夜、今までで一番多くの声が聞こえた。  ──若い女の声 「院長、クビなんだって?」 「本当? なんで?」 「実はね、廃病患者が出たんだって!」  ──しわがれた声 「ここで手術を失敗した患者がいるんだとよ」  ──恐怖に怯える声 「失敗してたらどうしょう……」  ──それをなだめる声 「大丈夫ですよ。今回は元々重傷な患者だったから」  ──苦しそうな声 「やっと居なくなるのか、重くて大変だったぜ」  ──甲高いあの声 「これでここも」  ──悲しそうな声 「あの子と一緒、可哀想に」  ──幼い声 「私、捨てられちゃうのかな?」  ──そして、院長の声 「よりによって、これからいうときに、どこでミスを犯したんだ? それとも、元々廃病だったのか?」
/100ページ

最初のコメントを投稿しよう!

19人が本棚に入れています
本棚に追加