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すっかりお馴染みになったナース──新橋志緒さん。
「おや?レンレンじゃないの。どしたー?」
面会時間ギリギリに来たから、ちょっと驚いてる。
「……美零に、会いに」
「時間ギリギリよ」
「…………」
「まぁ、いいわ」
そう言って志緒さんは立ち上がる。
「内緒よ」
イタズラっぽく口に人差し指を当てて、言う。
「本当は会わせちゃダメなんだけどね」
カラカラカラ
と何故か集中治療室の扉を開ける新橋さん。
「美零ちゃん。急に意識を失っちゃってね…」
志緒さんに似合わない、
小さな声。
「美零…」
名前を呼ぶ。
いつの間にか名字で呼ぶようになっていた名前。
「みーちゃん…」
室内に響くのは
掠れそうな俺の声と、
美零が生きてるという証の心拍数。
本当は泣きたいはずなのに、何も出てこない。
美零の体は、たくさん管が繋がれている。
あ、そうか。
今日はいっぱい遊んだんだね。
だから、怒られて、縛られて、仕方なく寝ているんだろう?
「…志緒さん」
「ん?」
「美零は…」
先が紡げない。
助けるように口を開いた志緒さんに感謝。
「もってあと一ヶ月。………言うなって言われてたんだけど、ね」
「…な…んで…っ」
「知られたくなかったんだよ、美零ちゃんは。我慢することに慣れてた子だったからね。君には絶対に。」
「志緒さ……っ」
「今日は泊まってく?」
俺は、頷いた。
「じゃあ毛布とか持って来るねー」
志緒さんの明るさが救いだった。
……でも、集中治療室に泊まって良いんだろうか?
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