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なぁ。美零。
お前は俺の名前を好きだって言ってくれたよな。
でも…俺も、お前の名前好きだよ。
柳の生えた川の、小さな美しさ。
美零は零の意味をゼロって思ってたみたいだけど。
他にも意味があるんだよ。
零の意味。
それは、小さいということ。
だから美零は小さな美しさがいっぱいあるんだよ。
俺の名前なんかより、美しい名前。
それに気付くのは遅すぎたみたい。
「恋貴」
名前を呼ばれて振り向くと、羽矢と鳴海が居た。
「…どした?」
「お葬式、終わっちゃうよ」
「早く行こう」
俺は紅葉した木に目を戻した。
はっきり言って、行きたくない。
あそこには、俺の嫌いな奴らがいる。
美零のこと悪く言ってたくせに、今はわざとらしく泣いてるんだろう?
そんなとこに行きたくない。
美零
美零
美零
どこにいる?
美零が居ない世界は、色を無くしている。
俺の世界は、美零と俺だけ。
俺達だけ。
世界が、二人のために回ってれば良かったのに。
片方が消えれば、世界が崩れるように。
きっと美零は、それが許せないから。
二人で離れないように、ずっと一緒。
そうであれば、良かったのに。
「……美零」
忘れないように呼ぶ。
美しい名前。
今更になって気付いた。
美零の名前の美しさ。
俺がどれだけ美零が大好きだったか。
end
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