1-1.親友の心

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  棗の両親は僕らが小さい頃に亡くなっている。 自動車事故だった。 棗を乗せていた車が、信号無視をした車に突っ込まれた。 棗だけは奇跡的に助かった・・・らしい。 僕はその時の事を、あまり覚えていない。 人間は本当にショックな出来事があると、その記憶を消す事があるという。 どうやら僕もそうだった様で、当時の記憶がまるごとごっそり抜け落ちている。 棗からその話を聞いた時は、かなり驚いた。 彼女の両親には色々とお世話になっていたから、亡くなったという事実を認めたくなかったのだろう。 最初は宮守 棗という人物さえ忘れてしまったらしい。 彼女はその時の事を引きずっているのだと思う。 「だから、たとえ私がどんな姿になっても、どんなものになったとしても、私の友達でいてくれる?」 それは最早、質問ではなく懇願している様だった。
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