1-1.親友の心

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  男が去っていった方向と真逆、僕の後ろから声が聞こえる。 動くな、と言われたが、思わず後ろを向いてしまった。 声の正体を確認しようとしたのだ。 が、失敗に終わった。 腹に伝わる衝撃。 何かが僕の腹に突っ込んできた。 いつぞやのボディーブローを思い出す。 そのまま背中から地面へとダイブ。 腹と背中から、痛みが電流のように走る。 思わず痛みで目を瞑ってしまう すかさず『何か』は僕に馬乗りになり、片手で僕の両方の手首を地面に押し付け、身動き出来ないようにした。 見事な手際の良さだ。 などと感心している場合では無い。 「ま、待った!僕は何もしてない!!ただ変な男に襲われただけで」 「・・・なんで」 目を瞑ったままの必死の弁解を早口で喋っている途中で、僕の身体の上でぼそっと何かが言った。 同時に両手を押さえ付けていた力が弱まるのを感じ、恐々 目を開けてみる。 「何でこんな所に ―――」 そこには。 「――― 人間がいるんですか」 獣の耳と尻尾の生えた女の子が、目を丸くして僕の事を見ているという、なんともおかしな光景があった。
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