0.闇夜の森で

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  「・・・・・」 「・・・・・」 静寂。 二つの影は一言も喋らない。 互いの目を見続けている。 辺りには風の音だけが静かに響いていた。 「・・・その沈黙は、降伏という意味で捉えて良いのですか?」 痺れを切らした獣の少女が問い掛ける。 丁寧な口調ではあったが、そこには苛立ちも含まれている風に感じられる。 しかし着物の少女は口を真一文字に結んだまま、頑なに喋ろうとしない。 「まただんまりですか。もういいです、勝手にやらせて頂きます」 握った右の拳をゆっくりと振り上げる。 着物の少女も覚悟を決めたのか、目を強く瞑る。 「・・・貴女には何の恨みもありませんが、ごめんなさい。」 獣の拳が、頭に目掛けて一直線に襲い掛かる。
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