1-2.猫と狐と鎌鼬

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  妖怪。 人間の理解を超える奇怪で異常な現象や、あるいはそれらを起こす、不可思議な力を持つ非日常的な存在のこと。 妖(あやかし)または物の怪(もののけ)とも呼ばれる。 掻い摘まんで言うと、つまり、化け物。 「えっと、何の冗談・・・でしょうか?」 僕がそんなとぼけた風に言うと、彼女は心底呆れたと言いたそうな顔でこう言った。 「冗談じゃないです。寧ろこんなシリアス全開の場面で冗談を言う馬鹿がどこにいますか?」 あんたの今の格好を見てみろ。緊張感なんか微塵も感じられないぞ。 「さっきの話の男、明らかに人外でしょう?貴方は奴が素手で木を切り倒したの見たんですよね」 「それは確かにそうだけど・・・やっぱり」 信じられない。 信じたくない。 妖怪は想像上の物だ。 「・・・いるはずない」 「現実逃避ですか?すぐ目の前にそれがいるというのに」 目の前? おうむ返しで聞き返そうとした時、彼女は続けて、不敵な笑みを浮かべて言った。 「私も、妖怪ですよ」
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