0.闇夜の森で

4/6
前へ
/41ページ
次へ
  がさり。 という、茂みが揺れ動く音が聞こえてきたのは、あと数センチで拳が頭に届くくらいの距離だった。 ぴたりと止まる、獣の拳。 何かがいなければ、そのような音は出ない。 しかし、人払いをし、他の動物も追い払った。 この場には彼女達以外に何もいない。 だから、そんな音が出るはずがない。 有り得ないのだ。 「誰!?」 獣の少女が動いた茂みに言う。 隠しきれなかった驚きや焦りが、表情に表れていた。 そのせいで、獣の少女の判断力が鈍る。 予想してなかったイレギュラーの介入、まだ見ぬ何かへ視線を遣る。 彼女の視界に、本来の標的、着物の少女の姿は、映っていなかった。
/41ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6人が本棚に入れています
本棚に追加