0.闇夜の森で

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  男はふらふらとした足取りで、近くに生えた木の後ろに隠れた。 幹の直径は1メートル強、そこそこ大きな木だ。 獣の少女はそれを、ぐるんとその場で回り、左手の甲で打ち、文字通り殴り飛ばした。 裏拳。 それで大木を十数メートル吹き飛ばし、見えなくなる。 だがまだ終わらない 直ぐさま右手を後ろに引き、二撃目の準備。 次は邪魔な遮蔽物をどかす為ではない。 確実に、仕留める為。 力を込め、標的を見る。 「・・・・・いない」 構えた拳という名の凶器を下げる。 幹の後ろには、あの男の姿は無かった。 「・・・くそ」 獣の少女は一人、毒づいた。
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