どうしても、忘れられない。

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「よく分かんないのに読んでんの? それにしてもよく本なんか読めるよなー。俺本読むとか苦手なんだよねー」 バカだからさ、とカラッと笑う彼に僕は貸してあげようか?とわざと聞いてみる。少しにやけた顔をしながら。 「お前が読んでよく分かんないもんが、俺に分かるわけねえだろ?」 彼は笑ってそう言った。何でもない笑みにも、見惚れてしまう。本を持つ指先に、少し力が入った。 これで、この会話は終わるんだろうなあ、って油断していたのに。 「で、何読んでんの」、って本を覗き込まれた。 僕の右肩のあたりに彼の頭が乗せられている。途端に僕は恥ずかしいのと驚いたので思わずびっくりして身体をびくっとさせた。 顔はもう真っ赤なんてもんじゃない。熱くて仕方ない。 彼の頭に僕の右肩が突き刺さる形になり、二人して痛みに思わず声を上げる。 「いって!」 「っつ!」 顎に思い切りぶつかってしまったみたいで、彼は目に生理的な涙を浮かべていた。 「ご、ごめんっ!」 あまりにも痛そうなのと、なんだかいたたまれなくなって、僕は彼に謝った。 「おま、びっくりしすぎでしょ」 笑いながら彼は言う。 「いきなりそんなとこに頭乗せるからでしょ!」 顔を真っ赤にさせたまま、僕は言い訳をする。この顔の赤さが彼にばれてやしないだろうかと、少しビクビクしながら、ちゃんと笑えているのか不安になりながら。
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