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だけど、彼の優しさに触れる度にやっぱり諦められなくなってしまって、結局好きで居続けて、でも何も出来なくて。
彼がたまに口にする、
「彼女欲しいなあ……」
って言葉を聞こえないふりして、悩んだり我慢したり一喜一憂しながらも彼だけを思い続けた。
でも、日に日に思いは強くなって。
食欲もあまりわかず、余計に彼に心配と迷惑をかけてしまい、それで余計に落ち込んでは、彼に慰めてもらい。
結局、彼への思いを一人で抱えきれなくなった僕は、散々悩んだあげく高校時代からの親友に相談することにした。
敢えて、相手の性別に触れずにこういう人がいて全然関係が発展しないんだって、そういう体で相談したもんだから、当然、返ってくるのは思いを伝えればいいじゃないか、というものだった。
それは、確かにびっくりするぐらい正論だった。
これが、本当に好きになった相手が女の子であれば、の話なんだけど。
でも、僕が彼に思いを打ち明けられないのは、性別だけが理由なわけではない。
彼との進展を望みながらも、やっぱり僕は今の友達としての関係を崩したくなかったんだ。……どうしても。
彼と話せなくなることの方が、ずっとずっと嫌だと思った。
なら、どうして僕はこんなに傷ついて、悩んでいるんだろう。
どうしてこんなに必死に彼を好きでいるんだろう。諦めきれないくせに、諦めようとして苦しくなって……。
それも、彼がどうしようもないぐらいに魅力的すぎるからなのかなあ。
「ただいまー」
気だるげに部屋に入ってきた彼に、僕はなんでもないかのように、本を読むふりをしながらおかえりーと言う。
全然、本の内容なんか頭に入ってやしないけど、好きな人が、
「また本読んでんの? 今度は、なんて本?」
なんて嬉しいことを言ってくれるから
僕は
「よく分かんないや」
ってなんでもないかのように答える。
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