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「隆弘。行くぞ」
「うぃーっす」
ほとんど何も入っていないカバンを肩にかけ、慶介に続いて部屋の外に出る。
え?なんでカバンに何も入ってないかって?そんなもん置き勉してるからに決まってるだろ!あ、良い子はマネしちゃダメだぞ☆
部屋の外は、朝から食堂に向かう同じ寮の生徒たちで賑わっていた。
「あっ……安斎様だ」
「ご機嫌麗しゅう、安斎様!」
少し寮の廊下を歩くと、出待ちをしていた慶介の親衛隊が声をかけてくる。相変わらず俺には誰も声をかけてこない。別に悲しくもないが。
「おはよう」
慶介は軽くそう返して、さっさと食堂へと続く廊下を歩いて行く。しかしそれだけでも、親衛隊にとってはご褒美だ。通り過ぎた背後からきゃあきゃあと騒ぎ立てる声がする。
「相変わらずの人気ですわねん、安斎様」
「キモイ死ね」
少しからかい気味に言ってやると、心底嫌そうな顔で悪態をつかれる。
これくらいしか普段での仕返しができないからな。思い知れイケメンこの野郎!
と、小さくガッツポーズを作っていると、前を歩いていた慶介にぶつかった。
「いてっ! おい慶介、何急に止まって――」
どうやら慶介が急に立ち止まったらしい。俺が文句を言っても、慶介はじっと前だけを見て突っ立っている。
んん?この先に何かあんのか……?
ひょいと慶介をよけて前方を確認してみる。
「……あるぇ」
なんでアイツらがここに?
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