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ところ変わって、こちら朱雀寮テラス。テラスなんてオシャンティー(笑)な名前は俺的にしっくりこないので、俺は「食堂」と呼んでいる。庶民の性ってやつかねー。
「にしても……朝っぱらからなんでここにいたんだろうな」
もぐもぐと千切りキャベツを頬張りながら、俺は目の前でうまそうなAセットモーニングを食べている慶介に話を振る。
「さあな……」
しかし慶介はそう返しただけで、カップを手に持ってコーヒーを一口飲む。
おいおい……。せっかく振ってやったんだから、話にくらい乗れよな。言葉のキャッチボール大事にしようや。
俺が不満げにまたキャベツをもさもさと頬張ると、げんなりとした顔で慶介が俺を見た。
「いつものことながら……そんなもん食べてて悲しくないのか? お前」
慶介の視線は、俺の目の前の皿に盛られた千切りキャベツに注がれている。
「同情するなら金をくれ」
「断る」
だって!だってですよ慶介さん!!ここの食堂べらぼうに高えんですよ!!庶民にはとても手出しできないんですよ!!
一食500円以上とか、仕送りに頼り切ってる貧乏学生には暮らしていけませんよええ。
学食のオバちゃんのご厚意によって、俺は生かされているといっても過言ではない。ちなみに今日の朝食は千切りキャベツのフジヤマ盛りでござんす。
「まあお前の栄養の偏った食事なんかどうでもよくてだな」
「お前から振っておいてそれか」
ずいぶんひどい物言いだな貴様。というか、俺も自分の食生活には危機感を持っている。一年はなんとか耐え抜いたが、あと二年生きていけるのかどうか……。在学中に栄養失調で死ぬんじゃなかろうか。
「でもよー、なんで本当にあんなお高いやつらがこの寮にいたんだか……」
「それこそ、やんごとなき事情ってやつじゃねえの」
「ふーん……」
そんなもんかねー。なーんか腑に落ちないんだよなあ。
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