三限目

4/6

252人が本棚に入れています
本棚に追加
/36ページ
ところ変わって、こちら朱雀寮テラス。テラスなんてオシャンティー(笑)な名前は俺的にしっくりこないので、俺は「食堂」と呼んでいる。庶民の性ってやつかねー。 「にしても……朝っぱらからなんでここにいたんだろうな」 もぐもぐと千切りキャベツを頬張りながら、俺は目の前でうまそうなAセットモーニングを食べている慶介に話を振る。 「さあな……」 しかし慶介はそう返しただけで、カップを手に持ってコーヒーを一口飲む。 おいおい……。せっかく振ってやったんだから、話にくらい乗れよな。言葉のキャッチボール大事にしようや。 俺が不満げにまたキャベツをもさもさと頬張ると、げんなりとした顔で慶介が俺を見た。 「いつものことながら……そんなもん食べてて悲しくないのか? お前」 慶介の視線は、俺の目の前の皿に盛られた千切りキャベツに注がれている。 「同情するなら金をくれ」 「断る」 だって!だってですよ慶介さん!!ここの食堂べらぼうに高えんですよ!!庶民にはとても手出しできないんですよ!! 一食500円以上とか、仕送りに頼り切ってる貧乏学生には暮らしていけませんよええ。 学食のオバちゃんのご厚意によって、俺は生かされているといっても過言ではない。ちなみに今日の朝食は千切りキャベツのフジヤマ盛りでござんす。 「まあお前の栄養の偏った食事なんかどうでもよくてだな」 「お前から振っておいてそれか」 ずいぶんひどい物言いだな貴様。というか、俺も自分の食生活には危機感を持っている。一年はなんとか耐え抜いたが、あと二年生きていけるのかどうか……。在学中に栄養失調で死ぬんじゃなかろうか。 「でもよー、なんで本当にあんなお高いやつらがこの寮にいたんだか……」 「それこそ、やんごとなき事情ってやつじゃねえの」 「ふーん……」 そんなもんかねー。なーんか腑に落ちないんだよなあ。 →
/36ページ

最初のコメントを投稿しよう!

252人が本棚に入れています
本棚に追加