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俺は激怒した。
何故俺が自分の部屋に引きこもって二次元世界へ脳内トリップをしている間に、俺が全寮制の学校に通うことになっているのだろうか。
「隆宏? アンタさっきから何震えてるのよ」
「隆ちゃん、どうしたの? 熱でもあるの?」
「トイレじゃん?」
さきほどから勝手なことを言っている目の前の女たちに一言言ってやりたいところだが、残念ながら俺はこの中で一番地位が低い。下手なことはいわない方が得策だろう。
頬杖をつきながらこちらを眺めているのが、我が梅田家次女の春奈。見た目はどこにでもいる普通の女子高校生だが、その実態はリア充の皮をかぶった腐女子である。
部屋は男と男が乳繰り合って「アッー♂」という内容の本で埋め尽くされていて、一歩でも足を踏み入れようものなら、延々とベーコンレタスのオイシさを語られ、挙句の果てにオトコの子の身体の構造を聞かれたりする。完全なるセクハラだ。俺はこいつを訴えたら勝てると思う。まあ一言でいうと、セクハラ腐女子だ。
次に、俺を心配そうな瞳で見つめ、体温計を持ってこようとしている梅田家長女の香純。昔から両親が留守にしがちな梅田家のお母さん的存在である長女は、とてもしっかり者だ。しかし、同時にとても過保護だ。正直、思春期真っ盛りな俺にとっては鬱陶しいと思う対象でしかないが、彼女自身はそれをよかれと思ってやっている。それがまたウザイ。
でもこの姉は次女の阿呆とは違って俺に比較的優しく接してくるし、何より俺に甘い。なので大目には見ているのだが――勝手に部屋に入り込んではエロ本をあら探しして、庭で焼却するのだけはやめていただきたい。俺の為にも、環境の為にも。
そして最後に、携帯を触りながら髪をいじっている三女の祐衣。俺の妹だが、ただいま絶賛反抗期なう。「キモオタクソ兄貴」こと俺を極端に忌み嫌うただのビッチだ。うん、クソビッチ。
俺はこの三人の怪獣たちから毎日肉体攻撃や精神攻撃を受けながら、肩身の狭い生活を送っていた。あれ、自分の家なのに肩身が狭いっておかしいな。実家だよなここ。
って、今はそんなことを言いたいんじゃないんだった。
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