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「おっ、やっと起きたか。隆弘」
「アンタ少しは待つってことを知ったほうがいい」
それに寝てねえし、と呟くと、そうかそれはすまんかった、と言って俺の頭をわしゃわしゃとかき混ぜる。
「あ~~っやめろやめろ! 犬か俺は!」
「お、パグか?」
「なんでそこチョイスだよ」
なにか?俺がブサイクだからか?全国のパグ愛好家の皆さんに謝れ!
パグはなあ、ブサカワとしての一ジャンルを確立した立派な犬なんだぞコノヤロー。
「つーかこんなことしに来たんじゃないだろ……。点呼はどうしたよ、寮長」
「ああ、そういえばそうだったな」
さも今思い出したというように、名表を挟んだバインダーを片手にくるりとボールペンを回す男。
―朱雀寮寮長、片平和義(カタヒラ カズヨシ)。
ガチムチとまではいかないが、鍛えられたガタイのいい体つき。いかにもスポーツマン!って感じの暑苦しい男だ。寮生からの信頼も厚く、親衛隊(笑)も存在する。まあ結構人気あるほうだ。寮長だしな。三年生だしな。関係ねえか。
え?なんで先輩の寮長にタメ口かって?
いいんだよ、だって別に敬うほどの人間じゃないから寮長。
で、寮長の仕事でもある寮生の点呼に、コイツはやってきたってわけだ。
「えー、梅田隆弘在室……。ん、安斎は?」
「あー、慶介……。寝てるんじゃね?」
「呼んで来い」
「うぃーっす……」
めんどくせ、とぼそりと呟くと、寮長にケツを蹴っ飛ばされた。早く行け、ということか。にしても蹴らなくてもいいんじゃない?慶介といい寮長といい、俺の扱いひどくない?
俺は二段ベッドに装着されているはしごを上って、ひょこりと慶介のベッドに顔を出す。
「けーいすーけくぅ~n」
「……聞こえてたよ」
べしっという音と共に、俺の視界が暗くなる。顔面の鈍い痛みと共に。
どうやら慶介さんは、俺の顔面に自分の読んでいた雑誌を叩きつけたようです。とんだ八つ当たりです。理不尽だっ!
不機嫌な慶介は、二段ベッドの上の段から、スタイリッシュに飛び降りる。おー(パチパチ)
てかはしご使えばいいのに。かっこつけやがって!
……って、俺が邪魔なのか。そりゃサーセンしたw
ん?……てかなんで、アイツ不機嫌なんだ?
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