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真・エピローグ
これにて『断罪の竜騎士』の物語は本当の意味で終幕。
この後、カリヤは五十歳を迎えると同時に眠るようにその生を終えた。
国中が長きに渡り国を守った彼の死を嘆き悲しんだが、しかし彼を愛した女王と幼き姫は決して公の場でも、一人でいる時も、涙を流さなかった。
彼に無限の愛を。
父に最大の感謝を。
我らが騎士に、安らぎを。
台座に剣が突き立てられた墓標にはそんな三文が刻まれている。
そこには絶えず多くの人々が献花をしに訪れ、そしてほとんどの人が、帰り際に奇妙なものを目撃し騒ぎ立てる。
ある者は『木の影から白いローブみたいなものを見た』と。
またある者は『墓標の前に白い服をきた人がいた』と。
何度か調査をしたがそんな人物は見つからず次第にデマとして処理され忘れられていった。
それから長い月日が流れ、とある国の、とある騎士学校で、一人の生徒が同級生に囲まれながら、使い魔の召喚を行った。
『……まさか、オレが呼ばれるなんてなぁ』
「………………」
『おい、お前だろオレを召喚したの』
「う、うん……そうだよ」
『声小さいし元気無ぇな、それに制服がボロボロ、そして周りの生徒は……あー、なるほど。なんとなくお前の立場は理解した』
「うぅ……」
『まあいいか。安心しろ、オレを呼んだんだ。騎士として真っ当とは言えないがそこいらのバカよりはマシな騎士にしてやる』
「本当に?」
『もちろんだ、オレも生前は騎士でとある国の騎士団長だったんだぜ。さて、先ずは契約だな。お前の名前は?』
「ライネル……ライネル=クリハロス」
『――――――。へぇ』
「な、なに?」
『いや、まさか″クリハローズ″の生き残りとはね。なるほど。オレが死んでまだ五十年ちょっとってトコか。色々あったようだがリミも頑張ったな。ん? という事はお前、リミの孫か?』
「お婆様を、知ってるっ?」
『おうよ、なにしろリミはオレの娘だ』
絶句するライネルに白髪に白い鎧を身にまとう彼は笑顔で手を差し出す。
『オレの名はカリヤ=シルグリット=クリハローズ。これからよろしくなライネル―――いや、我がマスター』
そして少年は彼を引き当てた。
それは必然か偶然かは分からない。
一つ言える事は、これから少年は彼の示す騎士道をその目で見るということだが、まあそれはまた別の話である。
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