過去~浅葱に誠を入れた男達~

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――1863年、春 立派な神社が立っているものの神主がいない神社が京にあった。 そのすぐ近くにはとは言えなく、周りと比べると少し小さいが、それでも立派な桜の木が堂々と生えていた。 「相変わらず、この桜の木はわかりやすいぜ」 桜を見に来たのか二十代前半、キリッとした目に整った顔立ち、髪はポニーテールのように上に縛っている……と、何処かで聞いたような青年と似たような容姿だが、身長はスラッとしており完璧――と言うのは少しおだて過ぎかもしれないが、それほど美男子だった。 「土方さーん」 先ほどの男を土方と呼んだ青年も、これまた綺麗な顔立ちをした美男子である。 「総司、終わったのか?」 土方の質問に総司と呼ばれた青年は嬉しそうに「はい」と返事をした。 「そうか…」 ふっと微笑みながらそう呟けばふわっと風が吹き、桜の花びらがひらひらと宙を舞い地面に落ちていく 「あぁ、やっと桜が満開になったんですね」 「京の桜は咲くのが江戸よりも遅いみたいだからな…」 土方は懐から布切れを取り出せば、宙に舞っている花びらを幾つか掴めば、布切れの上にそっと乗せゆっくりとそれを包んだ。 「山南さんに頼まれたんですか?」 「あぁ、体調が優れないからな… "私の代わりに満開になった時に吹いた桜の花びらを幾つかお願いします"だとよ」 「ぷくくっ、何ですかその声… 山南さんの真似ですか?」 「わ、笑うなッ!!」 総司はお腹を抱えながら笑いを堪えていると、顔を真っ赤にさせわなわなと握り拳を作っている相手に気付かず、ガツンと頭を殴られた。
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