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「苗字は奏で名前は分からず、総司に似てるがあいつの方が質が悪い…
だが、あいつの言ってた"自分のるーる"とやらには驚いたが――。」
奏が何者なのか知るために土方は自分なりに解析を始めた。
「俺の攻撃を回避、または受け止め距離をおいたあの動き……
そしてあいつのあの刀の鞘の傷、実戦慣れした奴の動きだったな」
もし奏が敵ならば厄介な相手だろうと予測を立て、奏が言い放ったあの条件によって土方は更にこちらに利益になるように近藤と話しあのような条件を奏に呑ませたのだった。
「……寝ぼけてはいたが、あの冷たく凍ったような瞳――、普通の暮らしをしていればあんな瞳になんてならねぇはず…
一体、どんな闇を背負って生きてきたんだ?」
いない相手に向かって疑問を投げかける様子は、同じ闇またはそれ以上の闇を背負った者にしか分からない微かな情報――。
「……山崎」
そう名前を呼ぶと天井の板がズレ、土方の目の前に黒い服装をし口まで隠した者が降りてくる
土方に服従しているかのように片足を付け土方の目を見ながら「お呼びですか?」と尋ねた。
「先程の呟きを聞いていたよな」
土方の問いに山崎は無言のまま頷き返した。
「あいつらの監視を続けながら先程の呟き以外の情報を俺の元に持ってこい」
そう命令すると山崎は「御意」と短く返答すると、また屋根裏へと戻り気配を消した。
「……さて、俺も仕事しねーとな」
土方は誰もいなくなった部屋でそう呟くと、怠そうに筆を取り書類を書き始めた。
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