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「ハハ、そうだね。……うーん……本当はね、俺、剣士志望じゃなかったんだよ」
「……そうなのか?」
「そう。医療班志望だったんだ。ギルドの医療チームは、国立の医療センターよりも給料が高いから」
「金目当てでギルドに来たのか!」
「ウチは両親が高齢で働けないんだ。だから」
ランスのように家庭の事情でギルドに入る者は少なくない。命の危険に晒される分、報酬が高額だからだ。
だからアリアも納得して頷いた。
「なのに何故剣士に?」
「入隊のときに身体検査と能力検査が行われるだろう? そこで、魔力が驚くほど高いことが分かって、流されるままに精霊士学校の試験受けさせられたんだけど……これがまったく精霊を召喚する素質がなくて。試験官たちの驚く顔、面白かったなぁ」
ランスは当時を思い出し、クスクスと笑う。
「魔力が高いのに精霊士になれなかったのか」
「うーん。頭が馬鹿なんじゃないのかな? 自分でも笑えるくらい素質がなくてね」
「ふーん……?」
アリアはチラ、と辺りの梢に視線を走らせる。
森の精霊たちが並んで小枝に座り、さえずる小鳥たちと歌いながら、ニコニコ笑顔でランスを見守っている。召喚されたわけでもない精霊が人前に姿を現し、長い間傍にいることは珍しいことだ。
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