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「とっても簡単だよ」
そう言って男の子私から本を半ば奪うように手に取り、ペラペラとめくってみせてから適当なとこでその動作を止めた
「入りたいお話のページを開いて、そのお話の題名を指でなぞるだけ」
ぱたむと音を立てて男の子は本を閉じた
「簡単でしょ?」
言いながら男の子は本を再び私に渡してきた
私はそれをおずおずと受け取る
「それで、本に入れるってのは分かったけどこれで私は何をしたらいいの?」
「それも簡単。お話をとめればいいんだよ」
「とめるって…、どういうこと?」
「言葉通りだよねー」
男の子は女の子に同意を求めるように話しかけた
「ねー。んー、たとえばのお話だけど、何らかの方法で川から桃が流れてこないようにできたら『もも太郎』なんて生まれないよね?」
「運命を変えたってこと?」
「そうだよ。かんたんでしょ」
女の子はくすくす笑いながら続ける
「この本はおねえちゃんの経験が積み重なって作られた本。もしどれかの物語をとめたらその後に続くはずだったお話はなくなってしまう」
「この本がなくなるってこと?」
私は女の子言葉に少し希望を見た気がした
しかしそこであることに気付く
「…たとえお話を止めれたとしてもそれが最初のお話じゃなきゃそれまでの物語はそのままじゃない」
「あはは、おねえちゃんかしこいね。そのとおりだよ」
女の子はくすくす笑う
でも、と男の子がしゃべりだした
「もしおねえちゃんがどれか一つでもお話をとめることができたらすべてをなかったことにしてあげる。もちろんおねえちゃんが死んだこともね」
「えっ!?
どうして?」
私は素で驚き、逆に質問していた
「その方が楽しいから」
そう言って二人はクスクス笑った
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