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騒ぎはここから始まった(笑)
穏やかにふける黒澤家の夜、黒澤の義母みすずは、週末の来客の準備の指示を遅くまで行っていた。
みすずは上品で、穏やかな女性だが、
「あの恭一郎さんが、お伺いなさりたいことって、
あなた、一体何でしょうね……?。」
なんとなく不安げな表情で、紅茶のカップを夫に差し出しながら問いかけた。
「さあ、
なんだかよくはわからないが、まあ、知ってる通りタカヤ様も素晴らしい青年だし、とても面白いお仲間たちがお見えになるそうだから、楽しむ気持ちに変えたらどうだい?。」
その頃、ヘビーローテーションを熱唱していた面白いお仲間達は、一斉にステージの上でくしゃみをした。
「集団くしゃみって、すごいですね、社長💧。」
「………その呼び方、
止めてくんない。
今まで通りの若の方がまだマシだ。
大方お前んちの会話に上がってんだよ。
で、
未華ちゃんとカゲヤマが何だって?。」
黒澤に、お話しが……と詰め寄られ、隅に連れてこられた矢島は、面倒くさそうに話しながらウイスキーを口に運んだ。
「先日、偶然カゲヤマくんの保険証を病院の手続きの際に拝見したのですが、
未華と全く同じ、生年月日でした。」
黒澤の言葉に、矢島はしばらく動きを止めると、
「確かに偶然にしては、符合性が高すぎるな。
で?。どうしたいの?。
オレはカゲヤマが幸せであればいいだけなんで、わざわざいろんなことを暴いて傷つくようなことがあれば、なんか握ってそうなあの医者といい、
……オマエを絶対許さないけど。」
矢島はグラスの氷を転がしながら、黒澤に強い視線を送った。
「わかりました。
決して迷惑はお掛けしませんし、
僕は事実を確認し、未華のことを知りたいだけです。
……そして。」
「そして?。」
「事の次第では、
今、事実上ひとりぼっちのカゲヤマくんを、妹として、
黒澤家に迎え入れます。」
「はああああああ!?」
矢島が店中に響き渡る声で、叫び、立ち上がった。
黒澤パパは、紅茶を飲み、みすずのお手製のクッキーを楽しみながら、
「そういえば、恭一郎の部下のお嬢さんで、未華にそっくりの子がいるんだ。
オマエにも逢わせるのが楽しみで、黙ってようかと思っていたが、つい話してしまったよ。」
その話を聞いた瞬間、みすずの顔色が変わり、
手から紅茶のカップが滑り落ち、床に砕け散ってしまった。
『アイヲサガスヒトⅡへ続く』
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