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沢野の実家、「男道」。
純喫茶とは大ウソ、完全オネエショーパブは大賑わい、しかし、矢島の叫びで全ての動きがストップしてしまい、
「おっきい声出して王子、なんかあったの?、
またかげたんの奪い合い?。」
ミラーボールが弾けるきらびやかな舞台の上から、マイクで沢野が心配そうに話し掛けてきたが、
「だーっ!、違う違う、
頼むからオレらのこと、スルーして!。」
半分図星であたふたしながら、矢島は拒むように両手をブンブン振っていた。
沢野は溜め息をつきながら、
「オイコラ、
大体、今日は祝いの席だぜ、隅でこそこそ話ししてないで、さっさと戻ってコイヤー!」
珍しく男らしくなってしまっている沢野の後ろから、済まなそうに眞田がやはりマイクで、
「すいやせーん、
沢野マネージャーってばすでにシャンパン二本空けてますんで、
不適切な発言がございましても多少お許しのほど、お願い申し上げます。
んじゃ、次、
角田先生の『祭り』で。」
沢野よりへべれけ感のある眞田は勝手にMCを引き受けていた。
矢島は、歌ってるメンバーたちと、黄色い声援や口笛を送り続けているショーのオネエたちを見て、立ち位置のおかしさにハタと気付き、
「ちょっと待て!、オマエら立場逆転してないか?!、
芸達者はわかるが、おまえらがお見せしてどうする、
本来見せていただく方だろうが!」
その隙に黒澤は、蔵元と楽しそうにお酒を飲んでるカゲヤマに気付き、恐ろしい勢いで近付いていった。
矢島は苦笑して、手元のウイスキーを飲み干した。
カゲヤマと視線がぶつかる。
明らかに何だか困ってるので、矢島が携帯を掛け、
「ああ、オレ。
ちょっとすみません、
って言って、店の奥の『ムーン』て部屋に入っておいて。
沢野と、沢野ママには話してあるから。」
カゲヤマが電話をしながらお辞儀をしてそのまま立つと、その代わりに大量のオネエさん方がワラワラと現れて、がっちり黒澤と蔵元を取り囲み、左右からお酌をはじめた。
矢島はさり気なく、
ほの明るい廊下を抜け、扉を開けると、大きな和紙の丸いお月様みたいな明かりの下、
カゲヤマがポカーンとその照明を見つめていた。
「カゲヤマ、オマエ一応安静の身、身体、大丈夫か?。」
「うん、ありがと。」
二人が微笑みあってると、
「はい、焼きプリン定食、お待ち!」
沢野が、お盆を片手に部屋の扉を勢いよく開けた。
「焼きプリン、定食?💧。」
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