エピソード1.00

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この大陸では戦争が起きている。二大大国、ガルシア共和国とゼブル帝国が毎日領土を奪い合って争いを続けている。 その二国の中間とも言いにくいような軽く田舎の街にあるカーパルス大学校。 まだ【平穏】を生きていられる若者達が通う大学。そこから物語は始まる。 【キィンッ】と、鮮やかに金属が叩かれる音が響いた。 「これで289戦289敗だな。ロイ。」 後頭部でまとめ上げられた黒髪が靡く。ポニーテールの女性が地を、地に伏せる茶髪の青年を見下ろして言った。 「………………毎回、そうやってカウントするの止めてもらいたいんですけど………」 カーパルス大学の中庭の草原で大の字になって倒れている青年がぼやいた。 「全ての軌跡はお前の糧だ。経験も戦果も、財布の中身も、数える事を止めたらそこで滅茶苦茶になるぞ」 「………だったら、せめてもうちょっと手加減してくださいよ。数えるんなら負けた回数より勝った回数のが良いです」 青年が立ち上がり、数歩先に落ちている槍を拾い上げた。 「馬鹿を言うな。自分より格下の相手に勝ったところでそれは成長に繋がらん。強くしてくれと弟子入りしてきたのはお前だろう?」 師匠と呼ばれている、スーツメイルを着込んだ女性も、地に突き立てていた大剣を背のホルダーに収めた。
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