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「………そうでしたね。でも、師匠に付きっきりだから自分がどれだけ強いのかわかんないんだよなぁ………」
確かめるように左手を握ったり開いたりしながらロイは呟いた。
「それを確かめる機会は今度作ってやる。心配するな。」
「さいですか………」
【絶対にろくでもないものだ】
それだけをロイは確信していた。
「で、今日はどうする?もう二、三回やるか?」
腕を組みながら師匠はロイに聞いた。
「今日は上がりで。課題やらないとそろそろ単位が危ないもんなんで………」
正直、一回の組手でもスタミナの大半を使わされるのに、課題という使命が残されている状況下でそんな無茶はしたくない。
「結局、お前は【いつでもいつも通り】だな。お前の【妖精連れ】も近いんだから、もう少し修練に費やしても良いんじゃないのか?」
離れた場所にあった学生鞄を拾い、帰り支度をしているロイに付き添いながら師匠が言った。
「普段から無理なんてあまりしたくないっす。」
「甘えだな。」
「用心深いと言ってください。」
「それは不用心と言うものだよ。」
「言葉遊びじゃないんですから………」
まるで児戯のような会話の応酬。しかし、師匠とのこんな時間もロイは好きだった。
師匠に背を向け帰路についたとき、ふとロイが振り向いて言った。
「……………妖精を連れたら、何か変わりますかね?」
「変わるぞ。」
不意に聞いた事なのに師匠は即答していた。
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