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ふいに風が変わった。
静かだった周囲に、異質の風が加わった感触。
(何かが近づいてくる…)
直後、馬の駆る足音が静かに響き始めた。
そして、それはだんだんと近づき始め、すっと寝ている朝倉の視界が暗くなるのと同時に足音も止まり、短く馬が嘶いた。
数瞬の間をおいて、朝倉が起きないのを見てとると、騎乗の者は馬から降り、その者の草を踏み締める音が響いた。
「誰…?」
ここにきてようやく朝倉は目を開けた。
「ひゃっ!!」
目を開け、発した声に反応して、甲高い声で驚く声が…。
まず目を引いたのは青よりもなお蒼い、その髪だった。
太陽を背に立つ人物の髪は、間からこぼれる太陽の光と相まって、キラキラと蒼く輝く光の帯を朝倉に伸ばしていた。
「あの…大丈夫ですか?」
恐々ながら声をかけるその人物は、見ればまだ幼さの残った少女だった。
「あの…どこかお怪我でも…」
そう言うが、少女は馬に結んだ手綱をより強く握りしめた。
(何も喋らないことで怖がらせたかな?)
「えっと…ここはどの辺になるのかな?」
会話が出来ることに多少なりとも安堵したのか、その手綱を握る手も自然緩まった。
「えっと…ここですか。
ここはザンピーク平原の南方ですよ」
(ザンピーク…そんな平原聞いたことがないな)
「ところで、君はこんなところで何を?」
少女は数瞬躊躇いながら、
「人が倒れてるかもしれなかったので…」
「助けにきてくれたの…?」
こくりと頷く少女。
「ありがとう」
少女に向かって、短く感謝の意を示す。
もう一度頷いた少女は、スルスルッと手綱から手を離すと、朝倉の目の前に腰を下ろした。
「どこもお怪我はないですか?」
「本当に何ともないよ。」
気遣いの言葉をかける少女の声色からは、険が大分抜けていた。
「動けずに困っている人がいるから、助けに行きなさいって言われてここに来たの」
少女は言った。
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