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「ここはガウって言います。
ちっちゃな村なので知らないでしょうけど」
照れながら、頬を掻くフィルを素直に可愛い子だと感じた。
「ここから西に行くと、ロベルト帝国があるので、そこに行けば帰り道も分かるでしょう」
「ロベルト帝国…?
覚えた」
一瞬キョトンとした顔になったフィルは次いで信じられないといった顔つきで、机を跨いでまえのめりに近づき、
「ロベルト帝国を知らないんですか?」
「あ…あぁ。
聞いたこともないけど」
その言葉を聞いてなお顔を赤くしたフィルが詰め寄り、
「ロベルト帝国を知らない!?
もしかして迷子ではなく、記憶がないのですか?」
唇同士が触れそうな位置を離すため、とりあえずフィルの額を指で押し戻す。
今までとは違った意味で顔を赤くし俯いてしまった彼女。
「記憶がないわけじゃない。
友達と野原を駆け回ったり、遊んだ記憶なんかも持ってる。
俺が暮らしていた場所は、東京っていう場所、日本っていう国だった」
フィルは「ニホン…」と呟き、
「分からないですね。
すみません、お力になれなくて。
とりあえず、今日は泊まっていきませんか?
迷子だというのなら、寝るところもないでしょうし」
願ってもないことだった。
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