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「着きましたよ」
俺が声をかけると、少しうとうとしていたらしいお嬢様はむっとしたように俺を睨んだ。
眠りを妨げられて不機嫌なようだ。
どこへ向かっていたのかを思い出したのか、彼女は勝手に車を降りて一人で遊園地の方へどんどん歩いて行った。
俺はどうすべきか考えながら、車でぼんやり歩いていくお嬢様を眺めていると。
後ろを着いて来ていないのに気づいたらしく、彼女は鬼の形相でこちらにユーターンして車の窓を乱暴に叩いた。
「何をしているんですの!? 早く降りなさい!」
俺は窓越しに答える。
「やっぱり俺も行くんですか?」
「当たり前でしょうっ!
わたくしに一人で観覧車に乗れって言いますの!?」
「いやぁ……」
この人の場合、一人で乗せても俺が一緒に乗っても、どっちみち怒りそうな気がするが。
俺は時々鋭い眼光でこちらを睨みつけるお嬢様の後ろを渋々着いていった。
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