観覧車から見える景色

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お嬢様は少し俯いて、指先で扇子に触れながら話し出した。 「わたくし、他人に色がついて見えるんです」 「……色? ですか?」   彼女は扇子で顔を半分隠し、恥ずかしそうに続けた。 「えぇ。人の雰囲気というか、オーラというか…… そういう物が、うっすら見えるんです。昔から。例えば」   もう色々と諦めたのだろう。 お嬢様は地上でぼんやり座り込んでいるさっきの店員さんを指さした。 「あの人は、黄色。 昴さんは、薄い紫。花音は桃色、とか。 そんな風に、人に霧のようなもやがかかって見えるんです。 体調が悪い時や、悩みがある時は色合いが変わったりしますけれど…… どんな人でも、必ず色がついて見えるんです」 「へぇ?」   突拍子もない話にどう反応していいのか分からず、俺は不抜けた返事をする。 .
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