観覧車から見える景色

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「べ、別に、信じられないなら信じないで構わないんですのよ!?  ただわたくしにはそう見えるってだけですから!」  俺は彼女に問いかけた。 「じゃあ、俺は何色なんですか?」   するとなぜかお嬢様は、気まずそうにこちらを見つめた。 「……それが、見えないんです」 「え? でもさっき、どんな人でも色がついて見えるって……」   彼女は苛立ったように声を尖らす。 「えぇ、どんな人でも色がついて見えますわ。 白く見える人も、透明に見える人も、たくさんいます。でも」   そこで一度言葉を切って、じっと俺を見る。 「白でも、透明でもない。 あなたには、色がありません。 見えにくいんじゃなくて、ないんです。 そんな人、今まで他に一人しかいませんでした。 だから、わたくしはあなたが怖いって思ったんです」 .
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