観覧車から見える景色

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「十五年前」   ふいにやわらかい声が聞こえて、顔を上げる。 「何の集まりかは子供のわたくしには分かりませんでしたが、神崎家に呼ばれたことがあったんです。 その時はまだ、花京院グループは今ほど大きな企業でもなかったんですけど」  「えぇ」 観覧車は三周目に入った。 ふと店員のお姉さんを見ると、観覧車の操作室の中で椅子に座って漫画を読んでいた。 色々と覚悟が決まったらしい。 「その時のわたくしは、とにかく毎日が窮屈で仕方ありませんでした。 父はものすごく厳しい人で、わたくしにありとあらゆる習い事や知識を詰め込みました。 一日の予定は食事と睡眠時間以外はびっしり埋まっていて、自由な時間なんてほとんどなかったんです」 彼女は寂しげに微笑した。 .
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