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「だって……十五年も前ですのよ?」
俺は苦笑しながらそれに答える。
「その時から昴と仲が良かったんだよ。
あの日も確か、うまい物が食えるから来いって誘われてたんだ。
誘うだけ誘って、あいつ勝手にどっか行っちまったんだけどさ」
あの日昴は俺を誘っておいて、自分はさっさと部屋に閉じこもってしまった。
きっと神崎家にも同じ年頃の男の子がいると聞いていた彼女は、俺のことを昴だと思い込んでいたのだろう。
お嬢様は小さく呟く。
「……信じられない。
じゃあ、あの日わたくしが見たのは、初めから昴さんじゃなくて、あなたで。
……わたくしが、十五年間ずっと思っていた人も」
そこで彼女と視線が合い、なぜか照れくさくなって外を見る。
「ちょっと待ってくださいよ。
もしかして、たったそれだけのことで昴を好きになったって言ってたんですか?
十五年も!?」
「それだけって……わたくしにとっては、人生を変えるような出来事だったんです!
その言葉があったから、どんな時も頑張れて……」
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