観覧車から見える景色

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そこで彼女は声を弱め、憂鬱な響きで話を続けた。 「あと、父はどんな物事にも手段を選ばない人で」 「えぇ」 「この間、半ば政略結婚のようなことを提案されて」 「政略結婚!?  今の時代にあるんですか、そういうことが」 彼女は嫌なことを思い出したのか、むくれながら頷いた。 「えぇ。使える物は娘でも使う人ですわ、あの人は。 だからそれまで父の言うことならたいていはおとなしく従っていたわたくしも、さすがに我慢出来なくなって」 彼女の態度を見るに、とても大人しく従って言うことを聞いていたとは思えないが。 まぁいいか。 「頭に来て一人で日本に帰国して、昴さんの家に乗り込んだんです」 .
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