観覧車から見える景色

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俺はふと気になって、彼女に問いかけた。 「また日本を出るんですか?  どこの国から来たのか知りませんが」 「アメリカです」 「アメリカに戻ると、結婚させられるんじゃないですか?」 彼女は穏やかな表情で首を横に振った。 「大丈夫です。 ずっと会いたかった人に会えましたから、もう迷いません。 わたくしの人生ですから、わたくしの生きたいように生きます」 そしてお嬢様は綺麗な笑顔で、俺から受け取ったキャンディを頬の横で小さく揺らした。 「小野寺から十五年ぶりにお守りも貰いましたし。 迷った時は、あなたの言葉を思い出して頑張ります。 ありがとう、小野寺」 その時初めて、彼女が心から素直に笑ったのを見た気がした。 ……何だろう、この気持ちは。 少し、彼女のことがかわいいと思えてきたような。 .
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