観覧車から見える景色

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彼女は小さく咳払いし、扇子で顔を扇いだ。 「じゃあ麗華って呼ぶのを許可しますわ」 相変わらず上からの発言だ。 どうしてだか、それすらかわいらしく見えてきた気がするが。 「じゃあ俺のことも司って呼んでください」 そう答えると、彼女は嬉しそうに目尻を下げた。 「……はい」 俺は慣れない感情に戸惑いながら、それを言葉にしていく。 「……俺、多分今まで本気で人を好きになったことがないんです」 彼女は黙って俺の言葉に耳を傾けた。 「ただ、それでも俺は率直に、あなたのことを」 「……はい」 何かを期待するように、彼女の瞳の光が強くなった。 .
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