観覧車から見える景色

37/43
前へ
/182ページ
次へ
俺は彼女に向かって微笑んだ。 「そうですね。 色々と経験不足ですが、よろしくお願いします」 彼女は押し黙ったまま、そっと俺の手に触れる。 「……麗華さん?」 冷たくて柔らかい手のひらの感触に、小さく心臓がはねる。 そして、彼女は俯いて。 「……つ、司……」 「はい?」 「気分が悪くなってきましたわ……」 青ざめた顔で、俺の肩に頭を預けた。 「わーっ! だから別の所で話そうって言ったじゃないですか! そりゃこれだけ観覧車で何周もしてたら気持ち悪くもなりますよ! ちょっと、もうすぐ下に着きますから耐えてくださいっ!」 「もうダメ……」 「麗華さんっ! 麗華さんっ!」 結局麗華さんは観覧車を降りた後、遊園地の中にあったベンチに座って小一時間ぐったりしていた。 .
/182ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7596人が本棚に入れています
本棚に追加