観覧車から見える景色

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観覧車で話した日から、ちょうど二週間たった。 あれから麗華さんはアメリカに旅立ち、父親と話をつけてくる決意をした。 俺は結局仕事で彼女の見送りにも行けなかった。 そんな俺を気づかってか、それともただの気まぐれかは知らないが。 急に昴が俺を自分の家に呼び、一緒に食事でもしようと誘ってきた。 槍でも降らなきゃいいけど。 花音ちゃんはエプロンをほどきながら俺に問いかける。 「司さん、麗華さんとは連絡をとっているんですか?」 「うん、電話番号は教えてもらったから。 国際電話だし時差もあるしで、なかなか話せないけどね」 それを聞いた昴がふっ、と鼻で笑う。 「キスもしてない女と電話で遠恋とか、お前らしいっちゃお前らしいな」 花音ちゃんが口を尖らせて昴に反論する。 「ロマンチックじゃないですか!  昴さんみたいにただれた男女関係を築いてる人よりよっぽど素敵だと思いますっ!」 いいぞ花音ちゃん、もっと言ってやれ。 昴は花音ちゃんの言葉を聞いてにやりと笑った。 「そのただれた男女関係を築いてる人間を好きになったのは、どこの誰かな?」 花音ちゃんは赤くなった顔をお盆で隠した。 「そ、そんなの知りませんっ」 えぇいバカップルめ。 俺なんでここにいるんだろう。家に帰りたくなってきた。 .
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