神崎家と花音

2/43
前へ
/182ページ
次へ
「ここ、だよね……」 私は麗華さんに貰ったメモをもう一度見返し、目の前の家の住所を確認する。 都内の閑静な高級住宅街。 この中でも、一際存在感のある大きな家。 家、というよりむしろお屋敷と言った方がいいだろう。 西洋風の造りの、白亜の豪邸。 屋敷の周りは灰色の高い塀で覆われ、壁や柱にはよく見ると細かく美しい装飾が施されている。 敷地の中にはきちんと手入れされた可愛らしい庭園があり、色とりどりの季節の花が咲き誇っている。 「昴さんって、やっぱり凄い人だったんだなぁー……」 帰りたくなってきたという気持ちを押し込め、深呼吸して恐る恐る呼び鈴を鳴らす。 すぐに中から若い女性の声で返答がある。 「はい、どちら様でしょう?」 「あの、先日連絡させていただいた桐生花音ですけど」 弱々しい声でそう答えると、表札の上についていた監視カメラがこちらを向いてびくりとする。 み、見られてるっ!  「桐生様ですね。どうぞ」 カシャン、と音が響いて自動で門の鍵が外れ、内側に開いていく。 .
/182ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7596人が本棚に入れています
本棚に追加