神崎家と花音

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とうとう敵地に乗り込んでしまった。 恐る恐る歩みを進めると、後ろでガシャッと音が聞こえてまたびっくりする。 私が入った後、門は自動で閉じて鍵が閉まったらしい。 家の中に入ると、黒いロングワンピースとレースのエプロンをつけた女性が立っていた。 つまりメイドさんだっ! 本物のメイドさんがいるっ! 私は人生初の本物メイドさんにわくわくしながら姿勢を正す。 メイドさんは上品な表情で微笑んだ。 「ご案内させていただきます」 「は、はいっ!」 エントランスから続く、長い螺旋階段を上る。 それにしても広い家だ。 隠れんぼとかしたら、一日中探しても見つからないかも、なんてくだらないことをつい考えてしまう。 メイドさんが奥の方にある茶色い扉をコンコン、とノックした。 「桐生様がいらっしゃいました」 「入りなさい」 渋みのある男性の声。 .
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