神崎家と花音

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窓から射し込む朝日を浴びながら、高級そうな皮のソファに座る男性。 彼の姿を見つけ、私ははっと息を呑んだ。 白い豊かな髮に、黒縁のメガネ。 その奥でこちらを楽しげに見据える、茶色がかった瞳。 昴さんにそっくりな男性が、そこにいた。 昴さんに聞いていた話だと、年齢はきっと六十代半ばくらいか。 グレーのジャケットとスラックスを着ているせいか、若々しい印象を受ける。 きっと昴さんが年をとると、こんな風になるのだろう。 そう考えて、思わず顔が赤くなる。 彼の唇が低くて落ち着いた声を紡ぎ出す。 「初めまして。桐生花音さんだね」 「あ……は、はいっ!  初めまして、桐生花音です」 彼はいたずらっぽく笑みをつくって、目尻にシワを刻んだ。 「昴と君のことは、色々と調べさせてもらったよ」 私は自分のスカートを握り締めて彼の言葉に頷く。 「あの、私……」 .
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