神崎家と花音

8/43
前へ
/182ページ
次へ
★・・・・・・・★・・・・・・・・★・・・・・・・★ 潮の匂い、肌を吹き抜けていく潮風。 ざん、と寄せては返す波音。 「海ですね……」 車を停めて少し歩いた先には、たくさんの白いクルーザーが係留されていた。 「えっと?」 大和さんはその中の一艘(いっそう)に乗り込み、私に手招きした。 「私の船だよ。釣りが趣味でね。 最近はなかなか来る時間もなかったんだが、今日は君に付き合ってもらおう」 「え? は、はいっ!」 野口さんに手伝ってもらいながら、クルーザーの中に乗り込んだ。 どうやら船の運転も野口さんらしい。 大和さんは釣具の準備をしながら、上機嫌で話している。 「私も船舶免許は持っているから、運転出来るんだけどね。 今日はゆっくり君と話したかったから」 彼は釣竿を手入れしながら野口さんに声をかける。 「波がけっこう高いな。 静かに釣りが出来る所まで進んでくれるか?」 「はい」 .
/182ページ

最初のコメントを投稿しよう!

7596人が本棚に入れています
本棚に追加