神崎家と花音

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飛沫を上げながら船はどんどん進んで行く。 クルーザーが普通どのくらいの速さで進むものなのか知らないが、速い、速い、ものすごく速い! けっこう風が強く、ぐらぐらと波に揺らされる。 私は目的地に着くまで船の中を見学してみた。 船の中にはナビや魚群探知機のような物はもちろん、寝室や小さなキッチンまである。 「普通にここで生活出来そう」 大和さんは私の船ってさらっと言ったけど。 これ、購入するとなると何千万円とか、そういう値段なんじゃ。 やっぱり昴さんのお父さんはただものじゃないな、と気持ちを引き締める。 大和さんはいつの間にか、ジャケットとスラックスからラフなチェックのシャツとベージュのパンツに着替えていた。 船は波が落ち着いている防波堤の内側に止まった。 大和さんはにこにこ笑いながら私に釣竿を渡す。 「どうぞ」 私は困惑しながらそれをじっと眺める。 「あのぅ、私釣りとかしたことがないんですが……」 「大丈夫大丈夫。なんとかなるから」 「は、はぁ……」 .
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