神崎家と花音

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大和さんはブルゴーニュの何とかっていう舌を噛みそうな名前の白ワインをゆっくりと味わっている。 私は海老とそら豆の料理をぱくりと口に運ぶ。 ムース状の珍しいソースがかかっていて、新鮮な風味がする。 料理の説明をあまり聞いていなかったので詳しいことは分からないけれど、断言できるのはやっぱりこのお店の料理は美味しいってことだ。 大和さんは夜景を見つめながら、ゆるやかに言葉を紡ぐ。 「今日は私のしたいことに付き合ってくれてありがとう。 久しぶりに若い女の子とデート出来て、こちらまで若返った気分だったよ」 大和さんはにやりといたずらっぽく笑った。 この笑い方は正しく人をからかう時の昴さんだ。 私は重要なことを思い出した。 「いえっ。こちらこそ、釣りに行ったのも初めてで、とっても楽しかったんですけど。 あの、今日、試験だって……。 私、それらしいことを何も出来ていないし、どうなのかなって、思うんですけど……」 言いながらどんどん声が萎んでいく。 .
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