神崎家と花音

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大和さんは満面の笑みで言い切った。 「嘘だ。そんなもの最初から存在しない」 「は、はい?」 ……嘘? 何が? 大和さんは緩慢な動きで食後のコーヒーを飲みながら、話を続ける。 「そもそも私は昴が結婚するのを反対したことなんて、一度もないんだがなぁ。 あいつは何を勘違いしているのやら」 「反対していない……?」 確かに、大和さんに直接結婚の話を聞いたことは今まで一度もない。 ないけれども。 「で、でも病院のこととか、長男として色々関係があるのではないでしょうかっ」 大和さんはあっさり言い切った。 「病院は病院だ。今回の話とはまた別だよ。 そもそも、私はあいつを神崎総合医院に縛りつける気もないんだがな。 昴が後を継ぎたくないというなら、その座を狙う人間はいくらでもいるし」 大和さんはそこで一度言葉を切り、ふっと鼻で笑った。 「まぁそういう利権にしか興味がない人間に任せるのは不安だから、昴が管理してくれればそれに越したことはないが」 .
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