神崎家と花音

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「え!?」 胸を針で突かれたような痛みが走った。 「入院って……」 「ひどい喘息でね。 よく発作をおこして苦しそうにしていたよ」 何も知らなかった。 私には敢えて隠していたのかもしれないけれど……。 言葉を失った私を見て、大和さんは元気づけるように微笑んだ。 「もちろん見てわかる通り、今は元気なんだが。 むしろ殺しても死にそうにないだろ?」 彼の言い方がおかしくて、思わず笑いがこぼれた。 大和さんは疲れたように、コーヒーに浮かぶ波紋をじっと眺めている。 「私は自分の仕事にかまけて、あいつが苦しんでいる時にちっとも側にいてやれなかった。 きっとあいつは、私を恨んでいるはずだ」 .
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