神崎家と花音

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「恨んでなんて、いないと思います」 少し強い口調で言いきった私を、大和さんは不思議そうに見つめた。 「私も、家の人とうまくいってなかったんです。 自分のことなんてどうでもいいんじゃないかって、ずっと意地を張って」 頭に小夜子さんのことが浮かぶ。 態度や言葉は厳しくても、冷静に考えればいつも私のことを考えてくれていたのに。 「だから、昴さんは大和さんのことを恨んでなんていないと思います! お医者さんになったのだって、きっと大和さんの影響だから……」 早口でそうまくしたててしまってから、呆気にとられた大和さんと目が合った。 途端に恥ずかしくなる。 「あ……えっと、あの、その、だから……ご、ごめんなさい」 詳しい事情も知らないのに、余計なこと言いすぎたかも。 .
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