神崎家と花音

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そう答えると、昴さんは声をたてて笑いながら立ち上がった。 そして私の手を引いて、歩き出す。 「もちろん褒めてるんだよ。 ずっと側にいたいと思ったのなんて、花音が初めてだから」 「……そう、ですか」 ――人の気持ちなんて、変わりやすいものかもしれないけれど。 私の前を歩く彼の背中と、少し冷たい手の温度と。 いつのまにか慣れてしまったタバコの匂いと、優しい彼の声を。 まるでアーチのように並んでいる木々の様子や、心地いい風が身体をすり抜ける感触を。 きっと私は忘れない。 運命や永遠なんて、言葉にすると子供っぽいと言われるかもしれないけれど。 私は五年後も十年後も、あなたの隣を歩けたらいいと思う。 .
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